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唐津焼 王天家窯二代目の日記です。非常に低血圧で朝起きれません。それでもめげずに頑張って作淘しています。とてもきまぐれな性格なので時々しかアップしないかもしれないけど応援よろしくお願いします!


by f92q
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バベルの塔

数年前 東京の有名な日本料理店に若手陶芸作家が器を
提供するという企画に参加することになった。
有名店日本料理店の料理長がわざわざ九州まで来てくれて
打ち合わせをすることになった。

料理長は挫折を知らずワンマン社長みたいな感じで
自分の腕一本でこの道をのし上がってこられたような方だった
他人の前でも平気で好き嫌いをズバリと言い 
僕の友人の陶芸家は自分の器を指摘されて落ち込んでいた


器の提供も無事終わり
提供した仲間でその日本料理店に食べに行くことになった
地下鉄を乗り継ぎ慣れない足どりで目的のホテルまでたどり着く
その日本料理店は東京のど真ん中の豪華なホテルの最上階にある
ホテルの絨毯はフカフカしていて僕の安っぽいスニーカーが吸い込まれるような感触だった
周りのインテリアや壁紙は美しく、まるで画家フェルメールの絵の中にいるような
錯覚におちいった

ビルの最上階でエレベーターが開く
シンプルでモダンな店内 ニューヨークのデザイナーが設計したらしい 
店内うす暗く凛とした緊張感が漂っていた
 
「さあ どうぞ」 多分選び抜かれたであろう知性と美貌を兼ね備えた従業員さん
がぼくらをテーブルまで案内する
暗い店内には 裕福そうな外人のお客さんが何組か食事をしていた
テーブルは窓際でそこからは東京が一望できた少し雨が降っていたので
外の景色は少しかすんでいた まるでここはバベルの塔 日本の富がこの街に
集められこの塔に吸収されている

早速 選び抜かれた美人な従業員が料理を運んできた
とてもダイナミックな器に繊細な料理がチョコンと盛られてきた
料理の味は日本料理といえば何というか少しダサい味というのが今までの
僕の印象だった。しかしここの料理はそういうものを一切省いた味だ。
それはまるで装飾を一切省いてつくった端正で品のある白磁の壺のようだった。

しばらくして料理長が僕達のテーブルにやってきた
割烹着姿になった料理長は顔つきも変わり
九州で会ったワンマン社長の面影はなく
そこには正真正銘一流の料理人が目の前に立っていた


食事も終わり料理長とそのホテルのバーに行った
バーには舞子さんや 格闘家 外国の投資家 IT関連の
社長達らしき人達でにぎわっていた 
雰囲気に疲れた僕はふと窓の外を見た
雨が霧状に降っていて外は淡い光が少し見えるだけだった
トイレに行くと外国人の投資家らしき人から話しかけられたが
まったく理解できずそのまま無視してしまった

テーブルに帰るとみんないい具合に酔ってきていた
隣にいた若手陶芸家は 絶対ここで飲むぐらい出世してやる
と気合を入れていた

僕はここに来れたら来れたらいいけど来ないなら来なくてもいいかなと思った


ついに別れの時がやってきた
バーをでてからエレベーターに僕達は向かった

料理長と二人っきりになった
みんなは後ろで何やら話こんでる

僕は思い切って料理長に話しかけてみた
もう二度と会う機会はないかもしれない

「ところで料理長はあんなにすばらしい料理を作りだせるんです?」

料理長は少し意外そうな顔をした
多分いきなり僕が質問してきたんで面喰ったのだろう
それから口を開けて舌を指さしながらしゃべり出した

「そうだな20歳くらいまでにあらゆる日本料理をこの舌で記憶したんだよ
だからこの頭にすべて叩きこまれてるんだありとあらゆる味覚がね」


ホテルの外に出ると雨は本格的に降り出してきた
傘を持っていなかった僕達は急いでタクシーを拾った
タクシーはゆっくり動きだしその雲までそびえ立つ
豪奢なビルは次第に霧の中に隠れていった



バベルの塔_e0216090_1022112.jpg









 
by f92q | 2013-02-06 07:15